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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)5351号 判決 1966年4月27日

原告 扇谷すい

被告 福田芳彦こと 林大栄

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告は原告に対し金五〇万円およびこれに対する昭和四一年三月三〇日以降完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求め、請求の原因として、

一、被告は左記持参人払式小切手一通を振出し、これを訴外蔡欽山に交付し金五〇万円を借受けた。

金額 金五〇万円

支払人 東京都港区芝田村町三丁目一番地 日華信用組合

振出日 昭和三九年一二月二五日

振出日 東京都港区

振出人 林大栄

二、原告は訴外蔡欽山から右小切手の交付を受けその所持人となったが、法定の呈示期間内にこれを支払人に呈示しなかったため、被告に対する右小切手の遡求権を失った。

三、よって、原告は被告に対し、小切手法上の利得償還請求として、被告が右小切手の振出によって得た利得金五〇万円とこれに対する訴状送達の翌日である昭和四一年三月三〇日以降完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。と述べ、甲第一号証を提出し、証人蔡欽山の証言および原告本人尋問の結果を援用した。被告は公示送達による呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しない。

理由

被告が原告主張の小切手一通を振出し訴外蔡欽山に交付し、原告が右訴外人から右小切手の交付を受けてこれを所持していることは、証人蔡欽山の証言および原告本人尋問の結果によりこれを認めることができ、原告が右小切手を法定の呈示期間内に支払人に呈示しなかったことは原告の自陳するところであるから、原告は右小切手につき被告に対する遡求権を失ったことは明らかである。

そこで原告の主張する被告の右小切手振出による利得の有無について考えるに、証人蔡欽山の証言および原告本人尋問の結果によれば、被告は昭和三九年一二月二三日頃訴外蔡欽山から金五〇万円を利息を定めず借受け、その支払のため本件小切手を同人に交付したこと、右訴外人はその直後原告から金三〇万円を利息を定めず借受け、その支払のため右小切手を原告に交付し右小切手金が支払われたときは差額金二〇万円を原告から右訴外人に交付することを約したことが認められる。右認定によれば、被告と訴外蔡欽山、同訴外人と原告間の本件小切手授受の原因関係はいずれも前記金銭消費貸借であって、右消費貸借上の債権債務は、原告の本件小切手の遡求権喪失に拘らず依然として存続することは言をまたない。してみると、被告は本件小切手の振出により訴外蔡欽山から金五〇万円を受領したとしても、同訴外人に対し原因関係たる金銭消費貸借上の債務として右金員を返還すべき義務を負担しているものであるから被告に利得があるということはできない。従って原告の本訴請求は、この点において失当であるから棄却を免れない。<以下省略>。

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